Copilot Studio のエージェントは「やってほしいことを日本語で説明 → ナレッジを追加 → テスト → Teams に発行」の4段階で、プログラミングなしに作れます。料金は Copilot クレジット制で、テナント単位の容量パックが25,000クレジット=月額200米ドル。Microsoft 365 Copilot のライセンスを持つ社員が社内向けエージェントを使う分はクレジットを消費しません。最初に作る題材としては、「総務の申請手順」のように、正解が文書で決まっている社内FAQが向いています。
「Copilot Studio で何が作れるのか」「料金はいくらかかるのか」「Cowork とどう違うのか」。Microsoft 365 を使っている会社から、この3つの質問をよく受けます。この記事では、AI 導入支援の現場で業務部門と一緒にエージェントを作っている筆者が、作成手順・料金の仕組み・最初の題材の選び方を、順を追って整理します。
※本記事は2026年10月時点の Microsoft 公式ドキュメント(Copilot Studio のクイックスタート・請求レート・価格ページ)に基づきます。料金・機能は変わるため、契約前に必ず公式サイトでご確認ください。
Copilot Studio とは|ノーコードでエージェントを作る道具
Copilot Studio は、Microsoft が提供するエージェント作成ツールです。「エージェント」とは、決められた知識(ナレッジ)をもとに質問に答えたり、決められた手順(アクション)を実行したりする、用途を絞った AI のことです。Copilot Studio で作ったエージェントは Teams、Microsoft 365 Copilot のチャット、社内ポータル、デモ用の Web サイトなどに発行して、社員に使ってもらえます。
Microsoft 365 Copilot のチャット画面にも簡易なエージェント作成機能がありますが、ナレッジの種類・アクションの追加・発行先の自由度は Copilot Studio のほうが広く、「部門で共有する窓口」を作るなら Copilot Studio のほうが本線になります。
作り始める前に決める4つのこと
- 目的を1つに絞る:「総務への問い合わせを減らす」「新入社員の質問に24時間答える」など、1エージェント1目的にします。何でも答える万能エージェントは、回答の精度も利用者の期待も管理しにくくなります。
- ナレッジ(根拠になる文書)はどこにあるか:SharePoint のフォルダ、社内ポータルの URL、PDF や Word のファイルが候補です。文書が散らばっているなら、先に1つのフォルダに集めておきます。
- 誰が使うか:全社員か、特定部門か、社外の顧客か。社外公開は料金区分と認証の設計が変わるため、最初は社内限定から始めます。
- 誰が育てるか:公開後に「答えられなかった質問」を見て文書を足す担当者を決めます。作って終わりにしないための最重要項目です。
Copilot Studio でエージェントを作る手順(6ステップ)
- サインインする:Copilot Studio(copilotstudio.microsoft.com)に職場アカウントでサインインします。試用版でも作成とテストはできますが、発行には有料プランが必要になります。
- やってほしいことを自分の言葉で説明する:ホーム画面の入力欄に「総務の申請手順について、社内規程をもとに社員の質問に答える」のように書きます(最大1,024文字)。AI がエージェントの名前・説明・指示(どう振る舞うか)を下書きし、ナレッジやツールの候補も提案してくれます。
- ナレッジを追加する:「ナレッジ」セクションで、SharePoint のフォルダ、公開 Web サイトの URL、ファイルのアップロードから根拠になる文書を登録します。社内FAQなら規程・マニュアルのフォルダを1つ登録するところから始めるのが確実です。
- テストして指示を直す:画面右のテストチャットで、社員が実際にしそうな質問を10個ほど投げます。回答が長すぎる、言い切りすぎる、根拠を示さない、といった点があれば「概要」ページの指示文を直して再テストします。「分からないときは総務に問い合わせるよう案内する」と指示に書いておくのが定番です。
- 最初の案内文と提案プロンプトを整える:会話の最初に表示される紹介メッセージ(何ができるか・聞き方の例)と、Teams で表示される提案プロンプト(最大10個)を設定します。利用者が最初に迷わないかどうかで、使われ方が大きく変わります。
- 発行する:画面上部の「発行」を押し、発行先を選びます。社内向けなら Teams か Microsoft 365 Copilot のチャットが一般的で、関係者だけに共有してから全社に広げます。
例:総務の「申請手順FAQエージェント」
| 項目 | 設定の例 |
|---|---|
| 目的 | 休暇・経費・備品・出張の申請手順に関する社員の質問に答え、総務への問い合わせを減らす |
| ナレッジ | SharePoint「総務規程」フォルダ(就業規則・経費精算規程・申請マニュアル PDF) |
| 指示(抜粋) | 登録された規程だけを根拠に答える。該当する規程名と項番を添える。規程にないことは推測せず「総務(内線)に確認してください」と案内する。金額や期限は規程の文言どおりに書く |
| テスト質問 | 「有給は何日前までに申請?」「タクシー代は精算できる?」「出張の日当はいくら?」「規程にない質問(例:社用車の私用)」 |
| 発行先 | Teams(まず総務チーム → 1部門 → 全社) |
| 運用 | 月1回、答えられなかった質問を確認して規程フォルダに文書を追加。担当は総務1名 |
料金の仕組み|Copilot クレジットとは
Copilot Studio の料金は「Copilot クレジット」という単位で数えます。エージェントが何かをするたびにクレジットが減り、組織全体で使った合計に対して支払います。契約の形は、次の3つから選びます。
- 容量パック(前払い):25,000 Copilot クレジットで月額200米ドル。テナント全体で共有します
- 従量課金:Azure サブスクリプションを紐づけ、使った分だけ月末に請求
- 前払いコミット:まとめて前払いすると最大20%の割引
| エージェントの動作 | 消費クレジット | Microsoft 365 Copilot ライセンス保有者が使う場合 |
|---|---|---|
| 従来型の回答(あらかじめ用意した定型文) | 1 | 無料 |
| 生成回答(ナレッジをもとに AI が文章を作る) | 2 | 無料 |
| エージェントアクション(手順の実行・推論) | 5 | 無料 |
| テナントグラフの基盤設定(組織全体の Microsoft 365 データを検索) | 10 | 無料 |
| エージェントフローのアクション(100アクションあたり) | 13 | 無料(エージェントがフローを呼び出す場合) |
※Microsoft Learn「請求レートと管理」(2026年10月時点)より。「無料」は、Microsoft 365 Copilot のライセンスを持つ社員が、本人の認証で社内向けエージェントを使う場合に適用されます。社外公開や、ライセンスのない社員の利用は標準レートで消費します。
例えば、社内FAQエージェントに社員が1日300回質問し、そのすべてが生成回答(2クレジット)だとすると1日600クレジット、月20営業日で約12,000クレジットです。容量パック1つ(25,000)に収まる計算ですが、Microsoft 365 Copilot のライセンスを持つ社員の利用分はそもそも消費しないため、ライセンスの配り方によって実際の消費は大きく変わります。
使いすぎの歯止めとして、Power Platform 管理センターでエージェントごとに月間の使用量上限を設定できます。前払い容量の125%に達するとカスタムエージェントは自動停止するため、停止してから慌てないよう、上限と通知先を先に決めておきます。
Copilot Studio・Copilot Cowork・Power Automate の使い分け
Microsoft 365 で「業務を自動化したい」と考えたとき、候補は3つあります。向いている仕事が違うので、目的から選びます。
| Copilot Studio | Copilot Cowork | Power Automate | |
|---|---|---|---|
| 何を作るか | みんなが使う「窓口」(FAQ・案内・受付) | 自分の作業を代行する「相棒」(集計・資料作成・メール) | 条件で動く「仕組み」(受信したら記録・通知) |
| 動かす人 | 作成者が公開し、利用者が質問する | 本人が依頼し、本人の権限で実行 | トリガーで自動実行 |
| 向く仕事 | 同じ質問が何度も来る、回答の根拠が文書にある | 工程が複数あり、毎回少しずつ内容が違う | 手順が完全に決まっていて、判断が要らない |
| 料金 | Copilot クレジット(容量パック/従量) | Microsoft 365 Copilot ライセンス+Copilot クレジット従量 | Power Automate ライセンス(Microsoft 365 に一部同梱) |
実務では組み合わせます。例えば「申請の問い合わせは Studio のエージェントが答え、申請が届いたら Power Automate が台帳に記録し、月末の集計と報告書は担当者が Cowork に任せる」という形です。Cowork の詳しい使い方はCopilot Cowork とは?できること・使い方・従量課金にまとめています。
つまずきやすい4つのポイント
- ナレッジの権限:SharePoint や OneDrive を認証つきで登録した場合は利用者本人が閲覧できる文書だけを使いますが、ファイルを直接アップロードした場合は元の閲覧権限が引き継がれず、エージェントを使える人全員に内容が見えます。アップロード方式なら利用者を限定し、どちらの方式でも、登録する前に共有範囲を見直しておきます。
- 根拠のない回答:指示に「登録文書だけを根拠にする」「分からないときは担当に案内する」と明記し、テストで規程にない質問をわざと投げて確認します。
- 個人情報・機密:人事評価や給与のような文書はナレッジに入れないか、別のエージェントに分けて利用者を限定します。生成AI利用ガイドラインにエージェントの扱いも書き足しておくと運用が揃います。
- 公開後に放置:答えられなかった質問を月1回見て文書を足す担当者がいないと、半年で使われなくなります。担当者と頻度を最初に決めます。
よくある質問(FAQ)
- Q. Copilot Studio は Microsoft 365 Copilot のライセンスがなくても使えますか?
- A. 使えます。Copilot Studio はテナント単位の容量パック(25,000 Copilot クレジットで月額200米ドル)または従量課金で契約でき、Microsoft 365 Copilot のライセンスは必須ではありません。ただし、Microsoft 365 Copilot のライセンスを持つ社員が社内向けエージェントを使う分はクレジットを消費しないため、すでに Microsoft 365 Copilot を配っている会社ほど追加費用を抑えやすくなります(2026年10月時点の公開情報)。
- Q. Copilot Studio のエージェント作成に、プログラミングの知識は必要ですか?
- A. 基本的なエージェントには不要です。やってほしいことを日本語で説明すると名前・説明・指示が自動で生成され、ナレッジ(SharePoint のフォルダや社内サイトの URL)を追加してテストし、Teams などに発行するまで画面操作だけで完結します。社内システムとの連携や複雑な分岐を入れる段階になると、コネクタや Power Automate の知識があると進めやすくなります。
- Q. 社内文書をナレッジに入れると、権限のない社員にも見えてしまいませんか?
- A. ナレッジの種類で変わります。SharePoint や OneDrive を認証つきで登録した場合、エージェントは利用者本人がもともと閲覧できる範囲のファイルだけを使って回答します。一方、ファイルを直接アップロードした場合は元の文書の閲覧権限が引き継がれず、エージェントを使える人なら誰でもその内容をもとにした回答を受け取れます。アップロード方式を使うなら、エージェントの利用者を部門などに限定してください。どちらの場合も、公開範囲が広すぎるフォルダや文書を登録しないよう事前に見直し、テスト段階で複数の立場のアカウントから質問して確認するのが確実です。
- Q. Copilot Studio と Copilot Cowork はどう使い分けますか?
- A. Copilot Studio は「社内の誰もが同じ質問を投げる窓口」を作る道具で、FAQ 対応や申請手順の案内など、決まった知識に基づいて繰り返し答える用途に向きます。Copilot Cowork は「自分の仕事を代わりにやってもらう」機能で、資料を集めて集計し報告書とメール案を作る、といった複数工程の作業を本人の権限で実行します。窓口を作るなら Studio、個人の作業を任せるなら Cowork です。
- Q. Copilot クレジットを使いすぎないようにするには?
- A. Power Platform 管理センターでエージェントごとに月間の使用量上限を設定できます。前払い容量の125%に達するとカスタムエージェントが自動停止するため、上限とアラートを先に決めておくと安心です。テナントグラフの基盤設定(組織全体の検索)は1メッセージ10クレジットと高めなので、必要なエージェントだけで有効にするのがコツです。
- Q. 最初に作るエージェントは何がおすすめですか?
- A. 質問の種類が限られていて、回答の正解が文書で決まっているものです。総務の申請手順案内、経費精算のルール、情報システムのよくある問い合わせ、就業規則の確認などが定番です。売上予測のような判断を伴うものや、回答の正解が人によって変わるものは最初の題材には向きません。